第十ニ話 やっぱりお前だったのか

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『パタパタパタパタ…』 土方は何も言わずに夜啝の縄を引っ張ってずんずんと歩いていた。 「土方副長殿。」 夜啝が笑顔で土方の隣まで歩いてくる。 「…なんだ。」 土方は目を合わせないように真っ直ぐ前を向く。 (今頃自分は無実だとでも言うのか? それとも今ここで刀を抜くとでも?) 心中穏やかではない土方は黙って刀の柄に手をかけた。 「民千代が今一人で永倉さんを見て居ります。」 (あ…あぁその事か。) 土方は早とちりを恥ずかしく思いながらも刀から手を離す。 「民千代…林 民千代の事か。 それがどうした?」 土方はポーカーフェイスで夜啝を横目で睨んだ。 「今永倉さんは熱を出して寝込んで居ります。 民千代を永倉さんの世話係にして下さいませんか?」 (熱…?世話係…?) 初めて聞いた。 永倉は熱を出していたのか……… 「…いいだろう。」 「ありがとうございます。」 夜啝は軽くお礼を言った。 (民千代を世話係にすれば嫌でも新八情報が入ってくるだろ。) 内心そんな事を思う夜啝は笑って土方を見ている事しか出来なかった 「「………………」」 再びの無言。 「お前は本当に永倉を斬ってないのか?」 長い沈黙に耐えきれず土方は口を開いた
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