第十ニ話 やっぱりお前だったのか

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夜啝はフッと笑って歩みを速めた。 「近からずとも遠からずっ…て所でしょうか。 私が油断していたせいで永倉さんは斬られました。 私が斬ったようなものです……っつ」 土方は立ち止まりその反動で夜啝の腕に繋がれた縄がギュッと締まる。 夜啝がムッとした顔で振り返ると土方が阿保みたいな顔で突っ立っていた。 「じ…じゃあお前が自ら永倉を斬ったんじゃないのか!?」 「えぇ。……私言いましたよね?」 軽く怒鳴り気味に叫ぶ土方にうるさいと言わんばかりに夜啝は頭を押さえて眉を寄せた。 「ば…馬鹿野郎!! それならそうとなぜ早く言わなかったんだ!!」 土方は夜啝の胸ぐらをグイッと掴んで持ち上げた。 「…私ムサいの嫌いなんですよ。」 「あ!!?」 土方がキレ気味に叫ぶ。 夜啝はフッと無表情になりぷいっと土方から目を反らした。 「男臭いのが嫌だったんです。 違うって言ってるのに何ですかあの殺気と冷たい視線は。 結局は牢行きなのですから無駄な話を長引かせたくないと思ってしたまでの事です。」 夜啝は土方の手をバシッと払いのける。 夜啝の強気な態度には流石の土方も怯む。 「それは悪いと思う…皆にも伝えておく。 だけど…今ならまだ取り消す事が出来る!!」 土方は夜啝の肩をぐいっと引っ張った。 「いいえ構いません。所詮不審者の身ですから。」 しかし夜啝は当たり前かのように突き放しスタスタと歩き始める。 「柏崎!!」 .
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