第十三話 ここにいるよ…

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「なぁなぁなぁ。」 もそもそと四つん這いで門番に近寄る夜啝。 「なぁっ門番さんよぉ。」 「なんだ?」 門番は面倒臭そうに振り返る。 「暇なんだけど。何か持ってねぇか?」 「…………………無い。」 (嘘だ。こいつ絶対嘘だ。) 「何だよ絶対に何か持ってんだろてめぇ。」 木と木の隙間から門番の足をばしばし叩く。 門番は眉間に皺を寄せて足をスッと引いた。 「無い。永倉さんが回復するまで大人しくしておけ。」 それきり門番は何をしてもこちらを振り向かなくなった。 「んだよ。シケた野郎だな。」 ブツブツ夜啝が呟いていると……… 「ぇ…!……よ…けぇ!!」 (ん…?) この声は…… 「すけぇ…!!……楊介ぇ!!」 「…民千代?」 その声は懐かしい民千代のものだった。 ここまで急いで来たらしく額には脂汗を浮かべている。 「何だ!!何をしにきた!!」 凄い剣幕で怒鳴るかのように門番が吠える。 「た…大変だ!!」 民千代はわたわたと手を動かしているが夜啝は騙しきれない。 (嘘だな…) 読心術を使わずとも分かる演技。 しかし額の汗は本物だ。
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