2525人が本棚に入れています
本棚に追加
/278ページ
新八が何かを手に取ってブンッと投げた。
『ゴッ…』
「…………つっ」
鈍い音がして頭に鋭い痛みが走る。
思わず夜啝はその場に膝をついた。
「楊介!!!」
一瞬何が起こったのか分からなかった。
足元を見ると血の付いた湯飲みが転がっていたから。
気付いたら頬が濡れていた。
なぜ泣いたのかは分からない。
自分の意思では無いのにポタポタと雫がこぼれ落ちるから。
「楊介……?」
新八は暴れるのをやめて不思議そうな顔で夜啝に近寄った。
「……何ですか。」
こいつは裏の新八。
楊介に用は無いだろう…
「泣いてるの?」
新八は指で夜啝の涙を拭う。
「大丈夫?」
やめてよ。
貴方と楊介は無関係の筈でしょう?
優しい笑顔を向けないで。
どんなに荒れてしまっても
新八の優しさは
変わらなかった。
溢れだした涙は
底をつく事を知らないから。
最初のコメントを投稿しよう!