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「いいのです土方副長殿。
理解して頂けないのは承知の上でしたから。
民千代はまだ私を信じきれていないのです。」
平然と夜啝は話す。
ビクリと民千代の肩が跳ねたのにも気付かないフリをして。
「所詮本当の私という者を理解してくれるのはほんの一握りなのですよ。
理解したような気になっている人物こそ愚かな者は居りません。」
「そ…んな…事「あるでしょう?」
キツイ口調で民千代の掠れた声を遮る。
言い返せない民千代は苦虫を噛み潰した様な顔できゅっと口を紡ぐ。
「口先だけの輩はもう見飽きました。
目先で同じ様な者が出来上がっていくのは見るに堪えません。」
そういうとスッと新八を優しく自分から離し、そうっと布団に寝かせながら話す。
「江ノ本楊介など実在しない人物をいつまでも求めないように。
呼び名も柏崎に御改め下さい。」
言わなきゃいけない。
言わなきゃいけない。
言わなきゃいけない。
彼はまだ薄汚い私の側になど居てはならないんだ。
民千代は平隊士。
民千代は平隊士。
民千代は平隊士。
「無知な駄犬の身で見苦しい限りですよ?
信じた私が馬鹿でしたぁ。」
彼には純粋なままでいてほしいから。
言わなくちゃ………計画が進まないから。
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