第十四話 口だけなら貴方はいらない

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「皆さん室内から居なくなって頂けませんか? 世話係は私が引き継ぎます。 異論は土方副長殿に御申し付け下さい。 彼は全てを知っておりますから。」 全員が一斉に土方を振り向いた。 「ま…まぁ」 ハハッ…ハハッ…と乾いた笑いをしながら後ずさる。 「そうとなれば皆さんもうここに用は無いでしょう。 即刻出ていって下さい。」 ぴしゃりと言う夜啝に全員たじたじで何も反論する事が出来ない。 「ならば出ましょう。 そのまえに報告が一つあります。」 意外な事に口を開いたのは沖田だった。 珍しく神妙な顔付きで静かに夜啝を睨み据えている。 「柏崎さん。貴方の入隊試験の日程は三日前の筈でしたが急遽、新八が目覚めた日…すなわち今日執り行いたいと思います。」 夜啝はにこりと笑って頷いた。 「異論はありません。承知致します。そして?」 ピッと冷静に見返す。 冷たい目のまま沖田は淡々と告げる。 「幹部三名と戦って頂きます。 私と一と後一人は指名型で。」 空気がぐっと引き締まる。 ((((それは流石に無理があるんじゃ……)))) 夜啝と沖田以外の全員が思った。 沖田は言わずとも知れている新撰組一二の腕前だし、斎藤もそれに劣らぬ剣豪だ。 それを連続で、それも三人など余程腕のたつ者でも困難と思える。 沖田は本気で夜啝を屯所から追い出す気らしい。 鋭いめつきとビンビンに放つ殺気がそれを物語っていた。
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