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「あぁ…貴方は熱だったから知らないんですか。
私あの後晋作刺しただけなのに永倉さんを斬ったと言われて牢に入っていたんですよ?」
さも当たり前かのようにさらっと話す夜啝。
「な…に…?」
段々と新八の顔が驚愕の色に染まる。
「永倉さんが起き次第処分を決めるって言ってましたけどどうやら処分はしないようですね。
しかし未だ疑いが晴れた訳ではないそうです。」
他人事のように興味無さ気な夜啝の態度。
「…なぜそれを早く言わなかった。」
悲しみと怒りが頭をぐるぐると回っている中新八は夜啝の言葉だけをひたすらに待った。
(俺は…信用されて…いない…のか…?
どうなんだよ…夜啝。)
「貴方は三日高熱にうなされてましたから。
起こすのも酷でしょうに。」
柏崎の声で紡がれる言葉は声さえ違えど夜啝の本心。
少しだけ安心している自分を抑え込み新八はキッと夜啝を睨み付けた。
「お前は牢に容れられる筋合いがなかった筈だ。
なぜ掛け合う事をしなかった。」
夜啝はフッと笑って目を細めた。
「掛け合いましたが誰一人として耳を傾けてはくれませんでした。
今私が無実な事を御存知なのは永倉さんと土方副長殿と林の三人のみです。」
幹部格の冷たい心が夜啝を信じさせなかった…?
新八だってこれでも幹部。
いつも隣で笑い合っている幹部達がした事が信じられなかった。
「…永倉さん、もう道場ですので。
残りは夜啝を交えて話しましょう。」
「………分かった。」
新八は仕方なく頷き道場の襖を開いた。
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