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中ではもう準備が整っており、今まで稽古していたであろう隊士達が一線に二人を睨み据えていた。
「……お前はいつもこの視線を背に感じているのか?」
少しだけ辛い顔をする新八ににこりと江ノ本の顔で笑いかけてやる。
「えぇもう慣れました。」
そして新八の元を離れすたすたと歩む。
一際強く夜啝を睨む少年の前でぴたりと立ち止まった。
「沖田先生。江ノ本楊介、準備整いました。」
「はい。」
沖田が立ち上がり静かに木刀を投げ渡す。
「木刀と木刀の一本勝負。
よろしいですね?」
しかし夜啝からは返事が無い。
木刀と沖田を交互に見て眉を潜めた。
「……沖田先生。俺竹刀がいいんですけど。」
「…?なぜですか?」
夜啝はことりと木刀を地面に置いて手をぶんぶんとはらった。
「木を触ると手がかぶれてしまうんですよ。いいですか?」
「……ならよろしいでしょう。
しかし私は木刀のままですが。」
「ありがとうございま~す。」
周りがざわっと騒ぎ立てる。
「あの坊主死ぬんじゃねぇか?」
「入隊試験に幹部三人はきついと思うんだけどなぁ~…」
「しかも竹刀と木刀だろ?
沖田先生あの餓鬼を震い落とす気なんじゃねぇのか?」
その言葉に楊介のすっとんきょうな声で首を突っ込んだ。
「まさか!皆沖田先生を悪く言わないでくれ!!
俺が強がってるから実力を分からせようとしてくれてるんだよ!!」
手をぶんぶんと左右に振り必死な演技を見せると隊士達は『そうかぁ~』と納得した。
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