第二十一話 間違うことなかれ

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――――…… 沈みかけた夕暮れ刻、墨の臭いを漂わせる部屋が一つあった 縁側付近には何足かの履物が乱雑に置かれ、室内では沖田が一人で執務をこなしている 「なんか…なんか違うんだよなぁ…」 …バァンッ!!! 「沖田ぁぁあ……」 ふと、地鳴りのような低い声が背後から投げ掛けられる 「はっ…はい何でしょう?」 沖田は猫背になっていた背中をピンッと伸ばして驚いた顔で振り返る 「芹沢鴨…先生。殺していいですよね?いいですよね?いいですね?いいです。」 突拍子も無い夜啝の言葉にへっ?と沖田は間抜けた声をもらす そしてなにかに気付いたのか、呆れたような顔で頭を掻いた 「な…何してきたんですかもう~!全く、目立つ行動は控えろと何度もしつこく言ってるじゃありませんか!」 「目立つ行動とは失礼な。地味な貴方と違うので仕方なく目立っているのです。…と、何見ていらっしゃるんですか?」 夜啝は軽く嫌味をちらつかせてから沖田の持つ書類を奪い取った 「あっ!ちょっ…柏崎さん!」 「へえ~入隊希望者総書ねぇ~。あ、この小さな人ですか?」 「も…もう~~!!」 もう言っても意味がないと理解したのか、沖田は深い溜め息をついて共に書類を覗き込んだ 「第一次応募でいらっしゃった楠木小十郎さんの事で、個人的に調べていまして…。 彼、山南さんとは旧知の間柄で剣技共々高く評価されている、とのことなんですが…どうも、嘘っぽいんですよね。」 「………へえ。なぜでしょう?」 夜啝は軽い声をあげて可愛らしく首を傾げてみせた 馬鹿にしてるのか、と沖田はむっと眉を潜めた 「私は入隊志願者を試すときに、必ず鯉口を切る音を聞かせます。 反応すれば合格、しなければ不合格…って事になるんですが、彼は反応するどころか刀すら見ていませんでした。 …それなのに、腕はいいから信用しろ、なんて納得できます?」 沖田はパチンッと肘掛けを畳み折ってひょいっと夜啝に振り返った 夜啝は頷きながら温い日向に腰をおろす 「…もうそんな時期なんですね。これは少し焦ってみましょうかね。」 「………………え?」 夜啝は書類を一瞥すると素っ気なく携帯を開いて弄り始めた 「えっ…ちょ、ちょ?ど…えっ?」 沖田はあまりにも軽い夜啝の口ぶりにわたわたと慌て始める 夜啝は無視を通してひたすら携帯を弄くった
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