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襖を開くと、そこにはとてつもなく異様な光景が広がっていた
三人の中で一番年嵩であろう山南が、自分よりも若そうな青年二人に頭を下げている
青年らは大方山南副長達のお仲間であろう
―――とうとう来たな、楠木小十郎め。
そう、端正な顔立ちをした片方の男は、じき間者として殺される事となるあの楠木小十郎だった
流石新撰組美男五人衆…とでもいうべきか、楠木はとてつもなく神々しい光を放っている
彼は放っている…ん…だけど……
「二枚目…か…?」
「ん?なんでこっち見てんのかな?握り潰されたいのかな~?その目ん玉。」
にっこにこしながら私を見つめるもう一人の彼は、どうも美男と言うよりか可愛らしいという言葉が当てはまりそうな柔らかい顔立ちをしていた
…ただし顔に合わないその口ぶりには可愛げの欠片も垣間見えない
その時、いきなり頭をあげた山南と私の視線が交わった
「かしざ「私は沖田隊に所属しております、江ノ本楊介と申します。以後御見しきりおきを。」
危なっ…と思いつつも、いきなり叫んだ山南の声を華麗に遮る
あ、江ノ本にしちゃった。まあいいや。
「へえ!あ、私は佐々木愛次郎であります!楠木くんとは大親友という名の念友であります。
あんまり深くは聞かないで!楠木くん恥ずかしがっちゃうからっ!」
「ちょっ…ふざけないで下さいよ!嘘もつくな!
え~…おほん。私は楠木小十郎です。私と佐々木さんはかねてからの知り合いです。いたって普通の仲なので!!あしからず。」
「照れないでよ小・十・郎っ!」
「ちょっ…お願いだから少しだけ黙ってて。少しってか、もういっそ一生喋んないで。」
なんか思ってた以上にフレンドリーだなあ……
そんな二人をぼんやりと見つめながらも、自動的に脳は回転を始めていた
地道に内側から崩す作戦か、はたまた内情にまで垂れ込んで情報を持ち逃げる作戦のどちらかと見える、だがならば『山南副長推薦』という目立つ肩書きを作るか…?
ギャーギャーと騒いでいる二人に構わず、夜啝は袖の中でカチカチと携帯を弄くった
そしてにたり、と笑って送信ボタンを押した
徹底的に遊び尽くしてやるよ……
「…楠木さん、佐々木さん、まだここに来て間もないでしょう?私があなた方の世話役になります!」
「え?」
「はっ…」
言った途端、山南と楠木が驚いたように目を見開いた
…佐々木は話すら聞いていないが
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