卯月 ―支―

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「あの、ね?クライン」 俺の頭を撫でていた手を止めて、ダイシが少したどたどしく話し出す。 「僕ね……ずっと悩んでたんだ。どうしてお母さんが事故で死んだ時、僕も一緒にいなかったんだろうって。クラインと一緒に苦しんであげられないのが、すごく……なんて言うのかな?その……」 「……『罪悪感』?」 「かな?双子なのに――昔は2人で1人だったのに、今はクラインだけが苦しんでるんだって思うと悲しくて……」 ダイシの葛藤は、俺が抱いているものと全く同じだった。 最後は消え入りそうになっていたダイシの声だったけど、次の瞬間には明るいトーンに戻っていた。 「けどね!最近になって思うんだ。やっぱり僕はその場にいなくて良かったんだって」 「どうして?」 「だってさ……僕が泣いたら、クラインは泣くのを我慢して僕を慰めるでしょ?いっぱい自分の気持ちを押し殺すでしょ?」 「――かもな」   昔の俺の口癖は『俺はお兄ちゃんだから』だった。   お兄ちゃんだから道に迷わないし、お兄ちゃんだからダイシを守る。 そして、――お兄ちゃんだから泣かない。   だからだよ、と呟いてダイシは綺麗に笑う。 「思いっきり泣いて良いよ?僕が支えてあげるから」 そう言って、ダイシは再び俺の頭を撫で始めた。
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