卯月 ―涙―

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「かあさ……ッ!!」   真夜中。 やっぱり目を覚ましてしまった自分に嫌気がさして、俺は布団に身を起こして溜め息を吐いた。 瞳から流れ落ちる涙は俺の意志には関係なく、後から後から量産される。   眠るダイシを尻目に、俺は今夜も足音を忍ばせて自分の部屋に向かった。 ババアを見殺しにしてから、俺の見る夢は日に日に長くなっていった。 ――まるで母さんが、俺が捨て去ろうとしている復讐心を再び俺の中に刻みこもうとしているように。 夢が長くなるとは言っても、母さんの自殺で目が覚めるのは変わらない。 つまり、追加して再生されるようになったのはその前の記憶だ。 ババアが死んだ次の日の夜は、去年の冬休み前に担任に犯されたところから夢が始まった。 今夜は高校の学費のために援交を始めるところから。   リダのおかげで変われると思ったのに……今夜からもう悪夢は見ないんじゃないかと、密かに期待していたのに。 呪わしい気持ちで母さんの遺書を手に取ると、更に呪わしい母さんの筆跡が俺を責め立てる。   ――復讐しなさい、クライン。 ――あなたのせいで、母さんは死んだの。   ――クラインのせいで。クラインのせいで。クラインのせいで。   ――クラインの瞳のせいで。
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