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「そうだ……!」
俺の目が青かったせいで、オヤジは俺だけを母さんに押し付けたんだ。
俺がこの家にいれば、母さんがあそこまで生活に困窮することはなかっただろう。
あのクズ男に傷付けられることも無かった。
俺の目がダイシと同じ色だったら、きっと母さんは今も生きていただろう。
つまり――
「俺の目が、悪いんだ」
視界の端に映ったのは、ペン立てに挿した安物のカッター。
迷うことなく手に取る。
チキ、チキ、チキ、チキ。
刃の繰り出される音がやけに大きく響く。
全ての元凶であるこの瞳が潰れれば、母さんはきっと俺を許してくれるはず。
もうこの家やダイシに対する恨みもなくなるはずだ。
――俺が、この眼球さえ抉り出せば――
そこまで考えて、自分の呼吸が荒くなっていることに気付く。
(怖い、のか……?)
当たり前だ。
どれだけの痛みか想像もつかないんだから。
でもきっと、この胸の痛みには遠く及ばないだろう。
俺は手の中の凶器を睨みつけると、グッと力を入れて握り直した――
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