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板張りの廊下はひんやりしていて、一歩歩くごとに僕の足先を冷やす。
階段の隣のトイレを見ても、電気は点いていない。
ということは……クラインは、あそこにはいない。
耳をすましても、廊下はシーンと静まり返っている。
もしかして、1階に水でも飲みに行ってるのかな?
そう思って部屋に引き返そうとすると、聞き逃しそうなほど小さな音がクラインの部屋から聞こえた。
僕は何故か足音を立てないように気をつけながら、クラインの部屋の襖を開けた。
――クラインは、何をするでもなく自分の手の中の何かを見つめていた。
こっちに背中を向けているから顔は見えない。
けどその後ろ姿はとても儚げで、窓を開けたら飛んでいってしまいそうで……。
「……クライン。何してるの?」
呼びかけると、全身が小さく震える。
ゆっくり振り返ったクラインの頬には……涙が流れていた。
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