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「クライン!何で――っ」
「ダイシ……どうして、ここに?」
僕の言葉を遮るように、クラインが抑揚のない声で問いかける。
不意に何かが鈍く光った気がして、僕はクラインの手元を見た。
僕より少しだけ筋張った右手には……刃の出たカッターが握られていた。
「クライン、何してるの!?何で泣いてるの!?」
クラインの顔が少し困ったように歪む。
僕は思わず駆け寄って、白い手からカッターを叩き落とした。
そっと触れたクラインの手は氷みたいに冷たい。
どれくらいの時間、ここで一人泣いていたんだろう?
胸が締め付けられるように痛む。
「……青いから、いけないんだ……」
「え?」
聞き返した僕にクラインが語った言葉が、僕を戦慄させる。
「全部、俺の目のせいだって母さんが……だから……」
だから……何?
それとカッターとがどう繋がるの!?
もう少し来るのが遅かったら――それを想像すると、心臓に直接氷を当てられたみたいにゾッとした。
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