卯月 ―涙―

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「クライン、こっち」   自分の布団に入ろうとするクラインを呼び止めて、僕は自分の布団をポンポンと叩いた。 ちゃんと端に寄って、クラインが入れるスペースを作るのも忘れない。 「クラインの布団、冷えちゃってるから。早く」   クラインが断る前にそう言うと、しばらく迷った末にクラインが入ってきた。 冷たくなった足同士が布団の下の方で触れ合う。 至近距離でクラインの青い目を見つめる。 虚ろに伏せられたその瞳は、読み取れそうで読み取れないクラインの感情を映し出していた。   ――悲しみ?怒り?苦しみ?戸惑い?   少しでもクラインの気持ちを知りたくて、僕はクラインの右手を両手で包み込んで話しかけた。 「お母さんの夢でも見たの?」 「…………」 「もしかして、毎晩夜中に起きてた?」 「…………」   答えないってことは、きっとそうなんだよね。 「おばあちゃんが亡くなってから?」 「……母さんが死んでから、ずっと」   そんなに長い間、1人で苦しんでたなんて……。 「ごめんね?気付いてあげられなくて――」   双子なのに。 いつも隣で寝てるのに。   クラインとの心の距離を埋めたくて、僕はぎゅっと手を握る。 ――小さい頃は、何でも分かり合えたのにね。
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