卯月 ―支―

2/5
263人が本棚に入れています
本棚に追加
/392ページ
『やっ……放せ!!何するんだよ!!』 俺を押さえつけて制服を脱がそうとしているのはあの男――ではなく、中学時代のクラスメイトたち。 中心で俺を見下しているのは、親友のヒロだった。 『っざけんなよ、ヒロ!!』 『ふざけてんのはどっちだよ』 『何が――』 『黙ってヤらせろよ!……まさか嫌だとは言わねーよな!?自分の親父とヤってるんだから!!』 ズクン、と心臓に痛みを覚えた。 小刻みに脳内で響く心音がやけに不快だ。 『何で、知って……』 『昨日お前んちに、昼に借りた教科書返しに行ったんだよ!そしたら、お前とオヤジが……!!』 正確には、あの男は俺の父親ではない。 それに、俺はあの男に脅されて仕方なく――!! けど、そのときの俺には反論する気力なんか残されていなかった。 『すました顔して、そういうシュミあんのかよ!ホモで近親相姦!?気持ち悪ィ!!』 『誰でもいいんだろ!?じゃあ俺たちの相手もしろよな!!』 『そうだよ、この変態!』 親友に『それ』を見られたこと。 クラスメイトに犯されそうになっていること。 暴言の数々。 ……その全てが、俺の心をズタボロにしていった。 そして……薄汚れた俺は更に穢されていく。 『嫌だッ――お前ら、ぶっ殺してやる……!』 「……ら……きて……」 『やめ……触るな……ッ!!』 「いん……クライン、起きて」  
/392ページ

最初のコメントを投稿しよう!