卯月 ―空―

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「早く早く!!今日のはすごいんだから!!」 活け花教室には、男女合わせて20人の子供たちがいる。 ほとんどの子達はもう片付け終わって帰っていった。 今はマサキ君と、もう1人男の子が残っている。 マサキ君は3年生。 元気な笑顔が特徴の、この教室で1番明るい男の子だ。 そんなマサキ君に着流しの袖を引かれて、僕は古い木の床に敷かれた置き畳の上を摺り足気味に歩いた。 今日の花材は桜。 一昨日くらいから関東で満開を迎えた桜は、時期的にはピッタリだ。 僕は大きな桜の木が好きだから活けるのはあんまり好きじゃないんだけど、生徒さんたちのリクエストがあったんだ。 マサキ君は僕の袖をパッと放すと、自分の作品の前で大きく胸を張る。 「ね?すごいでしょ?」 ――正直、少し花が咲きすぎている。 マサキ君の選んだ花器は華奢な造りだから、頭でっかちに見えてしまう。 もう少し花の少ない枝を選ぶべきだったかな。 一緒に使っている花も濃いピンクのハナモモとオレンジ色のポピーだから、トータルで見たときに騒がしい印象を受ける作品だった。
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