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「ダイシ先生!」
さっき片付けを終えたはずの男の子が、小走りで寄ってきた。
「ジュン君!帰ったんじゃなかったの?」
ジュン君はこの2人の友達で、いかにも女の子にモテそうな顔立ちをしている。
確か、幼稚園の時にクラスの女子全員からバレンタインチョコをもらったことがあるって聞いた。
う、羨ましすぎる……。
けど本人はそんなことは話のタネくらいにしか思ってないみたいで、マサキ君たちと話している時の方が楽しそうだ。
「隣の教室でコイツらのこと待ってた。それより先生、お客さんだよ!」
「僕に?誰だろう?」
「先生んちの人。雨降ってるから、迎えに来たんだってさ」
言われて窓を見ると、水滴の付いたガラスの向こうに薄暗い空が見えた。
そういえば、降水確率50%って天気予報で言ってたっけ。
音もなくシトシト振ってたから、気付かなかったみたいだ。
ってことは、きっといつも通り西村さんが来てくれてるんだろうな。
「そっか。ありがとう、ジュン君。もうちょっと待っててって言っといてくれる?」
「分かった。ってか、先生んちにあんなイケメンいたんだね。お母さんたちが騒いでるよ」
子供のクセに整った顔でニヤリと笑って、ジュン君が走り去っていく。
イケメン?
確かに西村さんはお弟子さんたちの中では若くて爽やかだけど、イケメンってほどじゃ……
――あ!きっとクラインだ!!
「マジで?そんなイケメンなら俺も見たい!」
「ジュンが言うんだから、本当にカッコいいんだよ!早く片付けちゃお!!」
2人がいつにない勢いで道具を片付けるのを見守りながらも、僕は早くクラインのところへ走っていきたい気持ちでいっぱいだった。
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