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置き畳を端の壁に立て掛けて、僕たちは多目的教室を出た。
隣の教室からは、お母さん方の話し声が聞こえる。
声がいつもより華やいでいるというのは、僕の勘違いじゃないはずだ。
「ガイジンさんだ……」
「確かにイケメンだ……」
ドアを開けたとき、マサキ君とカズ君が囁きあった。
「お母さん方、お待たせしました。終わりましたよ」
声をかけると、人の輪の中心でにこやかに話していたクラインが一番に僕に気付いた。
両隣の椅子には、やっぱり3年生のショウ君とサトシ君が座っている。
「あら。アンタたち、もっとゆっくりやってて良かったのに」
「そうよ。全く、こういう時に限ってさっさと片付けるんだから。やぁね」
ねぇ、とお互いの顔を見合わせているのは、もちろんマサキ君のお母さんとカズ君のお母さん。
分かり易く邪魔者扱いをされて、2人はふくれっ面をする。
その様子を見て、クラインが苦笑しながらフォローを入れる。
「きっと2人とも、お母さんを待たせてると思って急いでくれたんですよ。良い子たちじゃないですか」
良い子と言われた2人は少し照れ臭そうに笑って頬を掻いた。
お母さんたちも、自分が褒められたみたいに嬉しそうな顔をする。
……さすがクライン。
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