263人が本棚に入れています
本棚に追加
サトシ君の言葉に、クラインの表情が曇る。
クラインの微妙な表情の変化を読み取って、周りのお母さんたちもシンと静まり返った。
きっとさっきから気になってはいたんだろう。
どう見ても外国の血が混じっているクラインが、名門と呼ばれる梶永家の血縁者だと名乗っているんだから。
「ねぇ、どうして?」
そんなお母さんたちの気持ちは子供たちにも伝わって、ショウ君がサトシ君の脇腹を肘でつつく。
「そういうこと聞くなよ」と小声で言いながら。
それでもサトシ君は、じっとクラインを――クラインの瞳を見つめている。
サトシ君は、好奇心が旺盛な子だ。
僕にもいつも色々なことを質問してくるから、悪気があってのことじゃないってことは分かるけど……。
ふとクラインと目が合う。
困ったようにも傷付いたようにも見える、寂しげな青い瞳。
クラインが自分で潰そうとした、僕の大好きな瞳。
――俺とダイシはこんなにも別の人間なんだよ。
――俺たちは赤の他人にしか見えないんだよ。
やめてよ、クライン。
そんなに自分の瞳を――自分を、嫌わないで。
最初のコメントを投稿しよう!