卯月 ―空―

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サトシ君の言葉に、クラインの表情が曇る。 クラインの微妙な表情の変化を読み取って、周りのお母さんたちもシンと静まり返った。 きっとさっきから気になってはいたんだろう。 どう見ても外国の血が混じっているクラインが、名門と呼ばれる梶永家の血縁者だと名乗っているんだから。 「ねぇ、どうして?」 そんなお母さんたちの気持ちは子供たちにも伝わって、ショウ君がサトシ君の脇腹を肘でつつく。 「そういうこと聞くなよ」と小声で言いながら。 それでもサトシ君は、じっとクラインを――クラインの瞳を見つめている。 サトシ君は、好奇心が旺盛な子だ。 僕にもいつも色々なことを質問してくるから、悪気があってのことじゃないってことは分かるけど……。 ふとクラインと目が合う。 困ったようにも傷付いたようにも見える、寂しげな青い瞳。 クラインが自分で潰そうとした、僕の大好きな瞳。 ――俺とダイシはこんなにも別の人間なんだよ。 ――俺たちは赤の他人にしか見えないんだよ。 やめてよ、クライン。 そんなに自分の瞳を――自分を、嫌わないで。  
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