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若い警官が後ろで声を上げた。
年配の警官が振り返り目に入った光景は…
若い警官が、彼自身の腰にある拳銃に手をかけて奪おうとしている女…チヒロとそれを阻止しようともみ合っている姿だった。
「おいっ!君っ!何をする…」
制止しようとした瞬間、年配警官の後頭部に衝撃が走った。
「あっ!…」
堪らず前のめりに倒れた。…意識が薄れる。
「はっはぁ~!…隙だらけじゃ~ん?おっまわっりさ~ん?」
ケンジは笑いながら、年配の方の拳銃に手をかけた。
「…やっ、やめろぉ…」
抵抗しようとするが、力が入らない。
ケンジは拳銃に繋がっている紐もろとも奪った。
「拳銃ってさぁ~俺一度撃ってみたかったんだよねぇ~…へへっ…」
薄れる意識の中で年配警官は、後輩の方を見た。
「…うぎゃぁああーーーッ!」
悪い夢を見ているようだった。
後輩はあろう事か、華奢な体の若い娘に腕をへし折られて悲鳴を上げていた。…右腕が逆方向に曲がっている。
そんな状況を行き交う人々は何もせず、声も出さずに遠巻きに見ていた。
チヒロも後輩警官の体に足をかけて、拳銃を無理矢理奪った。
「おとなしく渡せばいーのにぃ。あははは~」
「いてぇーっ!いってぇよーぉおっ!」
後輩警官が激痛に叫び続ける。
「…かっ、神田…」
年配警官が這いつくばり、手を伸ばす。
「…うるさいねぇ~…チヒロぉ~撃っちゃえば?…撃っちゃえよ。へへっへへへへへ~」
「…やめろ…やめてくれ…」
「あたしもテッポー撃ってみたかったんだぁー…バァンバァン…アハハハハ~」
チヒロは苦しみもがく神田に向かって、撃つ真似をした。
「…キャーッ!」
「うわっ!うわぁぁっ!」
周りに群がっている人々はそれを見て我が身の危険を感じ、悲鳴を上げて我先に逃げ始めた。
パニックが起こった。
「撃っちゃえ!撃っちゃえ!撃っちゃえ!撃っちゃえ!」
「バァン!バァン!バァン!バァ…」
パンッ!………
神田が被っていた制帽が飛んだ。
血しぶきと共に…
「やっちゃったぁ~ケンジぃ、あたし撃っちゃったよぉ…おもしろ~い」
「…あ…あぁぁ…神田ぁ…貴様ら…」
一瞬で動かなくなった神田の亡骸を見つめ、年配警官が怒りの力で立ち上がろうとする。
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