138人が本棚に入れています
本棚に追加
追う方と追われる方が、完全に逆転してしまった。
直線をバックで走るパトカーにぶつかるまいと、後続車が慌ててハンドルを切りやり過ごしていく。
優に200mは走行した。
…しかし、カップルとの距離は縮まらない。
笑ったまま追いかけてくる。
「なんだあいつら!?有り得ない!そんな馬鹿な!」
「まだ付いてきてるのか!?だいぶ走ってるぞ!?」
二人の警官は、明らかにパニックになっていた。
常人ではない。
オリンピック選手以上の体力と脚力だ。
「…わわっ、うわわぁーっ!」
運転している警官が、突然叫び声を上げた。
「…えっ?なん…」
助手席の警官が、何事かを尋ねようとする間もなく、とてつもない衝撃が走った。
パトカーは赤信号の交差点にさしかかり、そのまま進入してしまった。
左側からの進んで来た車が、急ブレーキをかけたが止まりきれずに、パトカーの後部側面に突っ込んだ。
パトカーは衝撃を受け、右に半回転して止まった。
中の警官達は、無事に済むはずもなかった。
両名ともサイドガラスに頭を打ち付け、気を失った。
そこに、カップルが追いついてパトカーのボンネットに跳び乗った。
「ハァハァハァハァ…ヒヒッ、ヒヒヒヒヒ~…
ハァ、ザマァねえな、お巡り~」
ケンジが嘲笑いながら拳銃の銃口を、警官達に向ける。
横にいるチヒロが言った。
「ハァハァハァ…ハハハハ~…ケンジぃ~面白いね!アハハハーッ!」
「…ああ、こいつら殺っちまって、弾丸もらっちまおうか?ヘヘヘ」
「殺っちゃえ殺っちゃえ~!アハハハーッ」
そこに多数のサイレンを鳴らして、何台ものパトカーが猛スピードで、あっという間にケンジ達の周りを取り囲んだ。
車を降りた警官達は、それぞれのパトカーを遮蔽物にし、拳銃を構えた。
「お前ら!拳銃を捨てろ!何をしてるのか分かってんのか!?コラぁ!!」
一人の警官が怒鳴った。同僚が犠牲になって、頭に血が昇っている。
「うるせーよぉッ!マッポがぁ~!ウジャウジャ湧いてきやがって!…こいつら撃ってもいいのかよ!?」
最初のコメントを投稿しよう!