警視庁特別捜査班

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剣尖(けんせん)の間隔が少しずつ縮まってゆく。 互いの間合いは充分に知り尽くしてはいるが、それでも尚毎回真剣に向き合えば、隙を閉ざす。 じりじりと間合いが詰まって、互いの打ち込みが出来る間隔になっても、未だ互いに動かない。 僅かな動きがきっかけで、一瞬のうちに勝負がつく… 素人目にも、それと解る緊迫した立ち会いだ。 背の高い方が瞬間、相手の竹刀を跳ね退け、面を打ち込もうと飛び込んだ。 「めーーーーんっ!」 気合いの入った声が、道場に響き渡る。 …一本だ! 仕掛けた方が確信した瞬間、相手が狭い面の視界から消えた。 「!?…」 …しまった! 思った時には、既に腹に着けた防具の胴に、打ち込まれた感覚が走る。 「どーーーぉっ!」 一瞬で勝負がついた。 二人の剣士は中央に戻り、中段に構えた後、竹刀を納め、互いに礼をして下がった。 相見(あいまみ)えた二人は、向かい合わせで正座し、防具を取る。 一本取られた方が先に面を脱いだ。 精悍で野性的な、浅黒い顔が現れる。 笑顔で口を開いた。 「いやぁ、勝てねえー!なんか不得意な物はないんですか?…ショーティさん」 言われた方が、面の紐を解いてその顔を現し、応える。 「…義正、腕を上げてるよ…危うく取られるところだった」 微笑んで言ったその顔は… 金髪が鮮やかなウェーブでバックに流れ、横と後ろを短く刈り込んでいる。 染めた髪ではなく、元々が金髪だ。 …それに加えて、と言うよりも何より印象的なのは、白い透き通る様な白い肌に整った顔立ち、南の海を想わせる澄んだ碧い双眸(そうぼう)… 彼は、明らかに白人だ。 ここはS県警の武道場。 二人は捜査一課の刑事達だ。 野性的な日本人の方は、義正コウヘイ…27歳。 そして白人の名前は、マモル・スマイソン…32歳。 彼は白人だが、国籍は歴(れっき)とした、日本生まれの日本育ち…したがって〔日本人〕だ。 白人系日本人…異色の刑事だ。
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