警視庁特別捜査班

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「…さて…義正、これからどうする?俺はこれからボクシングジムで、もう一汗かいてから風花に行くが…」 スマイソンが頭に巻いていた日本手拭いで、首の汗を拭きながら尋ねた。 「ボクシングですか?…やった事ないからなぁ… いや、でもその後風花で一杯ですよね?…それもいいなぁ~…ボクシング俺に教えてくれますか?」 義正は、スマイソンの誘いに乗り気だ。 「…ああ、まずはバンテージの巻き方から教えるよ…行くか?」 「分かりました!じゃあ、お願いします!」 「決まりだな。汗だけさっと拭いて、そのままランニングでジムへ直行だ」 「ジムって、ここからどれくらいでしたっけ?」 「3キロくらいだよ」 「ふぇっ!結構な距離ですねぇ~」 「走り込みはボクシングに限らず、すべての基本だよ。デカなら脚が基本だしな…スウェットは持って来てるか?」 「ええ、いつもロッカーに置いてます」 「よし、じゃあ問題無しだ。片付けて用意しよう」 「…はい」 スマイソンは後輩の、この義正刑事を弟の様に気に入っていた。 運動のセンスも自分に近い、良いものを持っているのもその一つだが、何より物事に対しての考え方が似ていて、好感を持っている。 剣道の防具を胴の中に一纏(ひとまと)めに納め、バッグに入れようとしている時、道場の入り口で声がした。 「お二人さん、稽古終わりか?お疲れさん!」 「…課長、今日はこれで私ら上がります」 スマイソンが応えた。 声の主は捜査一課の課長、矢野セイイチだ。 スマイソンの良き理解者であり、上司だ。 短髪で、いかにも叩き上げの年配の上司は、穏やかな顔で言った。 「おう、ご苦労さん!…上がりで済まないがショーティ、ちょっと部屋に寄ってくれないか?ちょっと話がある」 「…?…なんですか?」 「…それは後で…部屋に来たら話すから…頼むわ」 「…分かりました。着替えたらすぐに行きます」 「悪いな…待ってるから」 矢野はそれだけ言うと、立ち去った。 「…課長、なんでしょうかねぇ?」 義正が言った。
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