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ビッシリとひしめく建物の林立。
深夜にも拘わらず、夥しく通りを行き交う人々。
ここは若者の街…まるで眠る事を忘れた街…
T都S区。
…その一角のビルの地下。
階段を一階分降りると、すぐさま…
【Thrash Sun】― スラッシュサン ―
の看板が、入り口ドアの上に掲げられている。
最近評判の、若者が集まり踊り狂うクラブだ。
少々重い、冷たく鈍い銀色剥き出しのドアを引き開けると、途端に腹にまで響く圧倒的な重低音と、耳を劈(つんざ)く高音が綯(な)い交ぜになり、一気に体と心を呑み込む。
フロアーは、様々な格好をした若い男女で溢れ、踊っている。
人がいなければ広い空間なのだろうが…
こう人が多くては広さを想像する事は、おおよそ出来ない。
陽炎が立ち込めそうな人熱(ひといき)れのフロアーの奥には、ガラス張りのDJブースが横たわり、中にはドレッドヘアーに顔が半分隠れるくらいのサングラスをかけたDJが、マイクに向かって大音量で客達の興奮を更に煽っている。
クラブを入ってすぐに、キャッシャーがあり、料金を払ってドリンクチケットを買う。
右側を見ると、バーカウンターがある。
壁伝いに人を掻き分け向かう。
カウンターの中ではリズムに合わせて踊りながら、Tシャツ姿のラフな格好でバーテンダーがシェイカーを振っている。
カウンターの止まり木に、レザーベストを直接肌に着たパンクヘアーの男が座っていた。
「ケンジ!お待たせ!」
近付いた女が大声で、男に声をかける。
「…おお!やっと来たかよ!?チヒロ!持ってきたか!?」
男…佐々ケンジが女…益岡チヒロを認め、尋ねた。
「買ったよ!」
チヒロは応えて笑った。
「チヒロちゃん、いらっしゃい!…何にする?」
バーテンダーが声をかける。
「リョウちゃんお疲れ!…なんでもいいよ、強いの!」
「…はいよ!」
バーテンダーのリョウは、すぐに透明な液体が入ったショットグラスを、チヒロの前に置いた。
「ありがとう…」
チヒロは酒を一気に空ける。
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