ナクシタモノ―上―

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そう言って、真面目な顔でごく普通の可愛い便箋を差し出した杞憂に3人は思いっきり眉を寄せる。 「……何?ラブレター?」 唯一、涼都だけがそう反応したが杞憂は至って真面目な表情のまま鼻で笑った。 「強引に押し付けられたのでな。強引に押し付ける事にする」 その言葉通り強引に押し付けられた便箋に拍子抜けした東と雪人はやや目を丸くする。 しかし杞憂はそれも放置で話し出した。 「言っておくが悪気があった訳じゃないからな。ただこんなラブレターを押し付けられて嫌味を言おうにも設楽が設楽家の人間だから言いにくいと思っただけだ」 そこまで勢いよく言うと杞憂はチラリと反応を見てから続ける。 「だからぼやいた、設楽が設楽家じゃなかったらいいのにってな。そしたら羊が出てきて『わかった。設楽家じゃなくなればいいんだね』って言ったんだ」 ……ん?
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