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「君のせいで俺の家紋付きの私物が盗まれてしまった。自分のせいで盗まれたのにその相手が気に入らない人間だからって、さすがに放置は出来ない」
「――何がいいたい?」
「これは明らかに杞憂の失態だ。責任も取らずにそれを放っておくほど君はツラの皮が厚くないって言ってるんだよ」
相変わらず笑顔は浮かべたままの東の言葉に杞憂はハッと鼻で笑った。
愉快そうに言う。
「らしくないな。実は中身は御厨なんじゃないか?ずいぶんいつにも増して言葉遣いが荒いじゃないか」
それに東も笑みを深くする。
涼都が入っているのなら、もっと直接的で反論の余地もないぐらい正確な言葉を選ぶに違いない。
東はふっと息をつくと少し柔らかい声で言った。
「俺は今、苛ついているだけだよ」
杞憂にじゃない。
もちろん、くじ引きの結果でもない。
盗まれたもののせいで、だ。
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