ナクシタモノ―下―

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「へぇー…何なの?」 それに杞憂は胸を張って言う。 「ずばり、人混みだ」 「…………………はぁ?」 思わず、眉を寄せた。 そんな東の反応に杞憂は気づいていないようで自信満々に続ける。 「よく考えてみろ。探すものは羊だぞ、羊。羊といえば群れで行動する生き物だ。人混みのような群れをみつければかなりの確率で合流するに違いない」 真面目に、言ってるんだろう。 本人はおそらく真面目も真面目、大真面目だ。 東は開いたままの口を閉じるととりあえず笑いをこらえた。 (た、単純) 羊=群れ=人混み 確かに間違ってはいないね。 しかし、羊は仲間同士の羊だからこそ群れるのであって、明らかに種類の違う人間の群れに果たして加わりたいと思うかどうかは別である。 やるだけ無駄だろう。 しかしながら同時刻、涼都がまさかそれをちゃっかり実行していたりする。 杞憂は誇らしげだが東は笑顔で一蹴した。 「杞憂、確かに近いけど却下。人間の群れじゃ意味ない」
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