ナクシタモノ―下―

18/58
前へ
/188ページ
次へ
*―――――――――――――――――* 涼都はニヤリと口の端をつり上げた。 「杞憂のヤツ今ごろ東に笑われながら突っ込まれてんだろーな」 「あ?何か言ったか?御厨」 「いいや、全然」 そう言って涼都はヒラリと手を振った。 昨日、杞憂に吹き込んでおいたのである。 羊=群れ=人混み。まさにこれに尽きる、と。 かなり力説してやった。 たぶん今ごろ東に提案して一蹴されているだろう。 いい気味だ。 ただメリーゴーランドは普通の羊とは違うようなので、一応さっき試したがやはり無駄足だった。 涼都は宇崎にわからない程度に笑う。 (でもあの東の事だ。すぐに勘づくはず) 確かに羊=群れの公式が間違っちゃいない事に。 恐らくこう思うはずだ。 群れは群れでも種類も違う人混みなんてもっての他。 ならば―――― 同じ仲間の群れなら?
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1641人が本棚に入れています
本棚に追加