二章「血統」

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運ばれてきたバーボンを斉木は美味そうに飲んでいる。 そして、立花はドライマティーニを舐めながら、ポツリポツリと、父のことを語りだした。 父・浩太のアルバムの、最終ページに貼り付けられた封筒を見つけたところから始まり、 父が裏カジノの常連だったこと。 その道では、そこそこ名の知れたプレイヤーだったこと。 それがきっかけで、デスギャンブル運営委員会にスカウトされたこと。 そして、そのデスギャンブルに参加した日に、死亡したことなど、立花の推論も含めた全ての情報を、さらけ出した。 「なるほど、事情はわかった。 それで? その顔を見れば聞くまでもないかもしれんが、一応、確認しておく。 お前はどうしたいんだ?」 残ったバーボンを飲み干すと、斉木は、立花の顔を覗き込むように見た。 「俺は…親父の仇を打ちます。」 立花は静かに、だがハッキリとそう言った。 「やっぱりか。 お前を見てきてそろそろ10年経つが、若い頃と少しも変わらんな。」 斉木は苦笑いしつつ、懐からシガーケースを取り出し、タバコに火をつけた。 「若い頃って、俺はまだ十分若いつもりですよ。」 立花も、そう苦笑で返す。 だが、斉木は笑いを封じ込め、真剣な眼差しでこう言った。 「そうだ。お前はまだ若い。三十そこらじゃ、世間では青二才と呼ばれる歳だ。 そんなお前が、百戦錬磨の親父さんさえやりこめた奴らを相手に、何が出来るというんだ? いいように遊ばれて終わりだぞ。」
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