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斉木の言う通り、立花はカジノはおろか、競馬やパチンコといった賭け事の経験が一つも無い。
そんな立花がデスギャンブルに乗り込んだところで、返り討ちに遭うのは目に見えている。
第一、プレイヤーを選ぶというデスギャンブルには、参加すること自体出来ないだろう。
そんなことは、斉木に言われるまでもなく、立花自身がわかっていることだった。
「わかってます。俺だってバカじゃない。いきなり大勝負なんてしませんよ。
実は、さっき話した親父の友人の向島さんに、一件、カジノを教えてもらってます。まずはそこで、経験値を上げますよ。」
向島と立花の父・浩太が、よく通っていたというカジノが近くにあると聞き、立花はその所在地を向島から聞き出していた。
「なんだ。そうなのか。
じゃあ早速行ってみようじゃないか?」
「行くって、今からですか?」
言うまでもなく、明日も仕事である。
「なんだ?お前はまだ若いんだろ?」
斉木はからかうように、二杯目のバーボングラスを、目元で揺らした。
「上等です。先輩こそ明日あくびが止まらなくなっても、知りませんから。」
「悪いな。俺は重役出勤だ。営業部長なんでね。」
こうして、立花と斉木の二人は、裏カジノに初挑戦することになる。
時刻は21時30分。
今夜は、長い夜になりそうだった。
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