三章「潜入」

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「ほんまに、何も知らんねんなぁ。 ええか。デスギャンブルっちゅうんは、博打のお祭りや。 選び抜かれた凄腕のプレイヤーと、これまた凄腕のディラーが差しでやり合う。 それを、そとから金持ちどもが、どっちが勝つか賭けるっちゅうわけやな。」 饒舌な西野の、説明は続く。 「せやけど、これがまた普通の博打とちゃうねん。 なにせ、プレイヤーが賭けるんは、己の命らしいからな。 その分、もし勝てたら、その時に動いた金の一割りが、貰えるっちゅう話や。少なく見積もっても、十億は下らんやろな。 大金か、死か。まさしく命がけの博打っちゅうこっちゃ。」 西野の話は訛りが酷く、多少聞き取りにくいところもあったが、大筋としては立花の予測を超えてはいなかった。 それにしても、命がけのギャンブルなどというものが実在し、それに肉親を奪われることになるとは。 もしこれが誰かの身の上話なら、「ドラマの見過ぎだ」とでも言ってやるところだろう。 「西野さんはやけに詳しいな。もしかして、参加したことがあるのか?」 立花が自分の境遇を自嘲していると、斉木が気になる部分を質問してくれた。 「アホなこと言わんといて。わしはそんな腕持ってへんわ。 この話は、立花はんから聞いただけや。」 (また親父か。) 向島の話といい、今の西野といい、結局デスギャンブルの情報源は、立花の父・浩太からの伝え聞きということである。 おそらく立花浩太は、自分がデスギャンブルに参加する段になったとき、相当詳しく調べたのだろう。 そしてそこに勝算を見いだし、参加に踏み切ったのだ。 そうでなければ、リスクを避けるタイプのプレイヤーだった父が、そんな命がけのギャンブルなどに参加するはずがない。 しかし、結果は言うまでもなく、父は帰らぬ人となってしまった。
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