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「勝負?俺たちに何をさせる気だ?」
「そうや。そんな話聞いてへんで。」
斉木と西野が、口々に警句を唱えたが、
「そのように構えなくとも、大丈夫でございますよ。簡単な遊び程度のゲームでございますから。」
と、上田は丁重さと、にこやかさを崩さず、再三誘ってくる。
立花は、前にもこういうことがあったのを、思い出していた。
それは向島とのやりとりである。
何か秘密を語るとき、やけにもったいぶるのは、この世界に住む者達の共通点だろうか。
「いいですよ、上田さん。やりましょう。」
立花は思い出し笑いをこらえて、了承の意を伝えた。
そういうやり取りがあって、今、立花達三人は、上田の案内でクラウン・フェイルズのVIPルームに、通されていた。
VIPルームは入り口から一番奥の突き当たりに位置するため、三人は店内を横切る必要があった。
スロットマシンやビデオポーカーなどのゲーム機コーナーを抜け、
クラップスの出目に歓声をあげる客達のそばを通り過ぎ、
簡易的に設置されたバーカウンターをかすめて、
四つ並んだ重厚な造りのドアの一つを開けて、立花達三人は、今の部屋に来たのだった。
その間、立花は客達をそれとなく観察していたが、どちらかといえば、着流しなどという目立つ格好の西野を引き連れる、立花達のほうが、客達から好奇の視線を浴びていたようだ。
とにかく、そうして立花達はVIPルームに落ち着いた。
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