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上田の衝撃的な発言。
立花にとって、求めてやまない父の仇の一人が、今、目の前にいるということになる。
当然、立花は敵愾心を燃やした。
しかし、その男は仇であると同時に、大事な情報源でもある。
決定的に情報が不足している立花にとっては、なんとしても聞き出さねばならない相手なのだ。
「そうか。とりあえずそれはおいといて、もう一つ確認したい。
あんたが勝ったとき、つまり俺たちが三人とも負けたときは、どうなるんだ?」
立花は簡単に割り切ることなどできそうになかったが、斉木は素早く切り替えた。
やはり、立花と斉木ではキャリアが違うようである。
「そのときは、特に何もございません。
強いてあげれば、わたくしから情報を得る機会を、永久に失う、といったところでしょうか。」
立花にとって、その返事は意外であった。
もともと上田からの勝負に乗らなければ、そんな機会は初めから無かったのだから、負けたときのデメリットなど、無いも同然である。
(この人は、俺たちに敵意が無いのか?)
そう思う立花の思考は、少しずつ回復してきたようだ。
「わかった。俺からは以上だ。」
「おわかりいただけましたか。他に何かご質問は?」
上田がそう言うと、西野が立ち上がった。
「上田はん。肝心の勝負方法を聞いとらんで。」
「おっと、わたくしとしたことが、これは失礼いたしました。」
上田が謝罪の言葉を言い終えないうちに、VIPルームのドアが開き、スタッフとおぼしき人物が、銀製の盆に黒いプラスチックのカップと、2cmほど白いのサイコロを乗せて入って来た。
「競技方法はこのダイスとカップを使い、いわゆる「丁半」で行います。
こちらのスタッフが、ダイスを振りますので、わたくしと対戦する方は、出目を予想していただきます。おわかりですね。」
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