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「あぁ、お前は治らない、末期ガンだ。…それぐらい、聞いたことはあるんだろ?」
昔、晃は走っていた、短距離の選手だった。
自分の中を風が抜けていくような感じが心地好くて、毎日毎日走っていた。
学校ではずっと陸上部に所属しており、何回も賞を貰っていた。
賞を貰うために走っていた訳ではないけれど、誉められるのは結構嬉しいものだった。
いつしか陸上部のマネージャーと恋をしたりして……。
「そっか……。俺、死ぬんだな…何時死んでもいい、後悔なんてしないと思ってたけど……。いざ、死ぬとなると怖いもんなんだね、死ぬってさ…」
走ることが、晃の全てだった。
走ること……それが生きている証だった。
しらず流れた涙が頬を濡らす。
それを見咎めた岩田が晃の涙を隠すかのように、晃を抱き締める。
「ごめんな…俺が力不足なだけに、お前を助けてやることが出来ない。……医者なのにな……」
ある日のこと。
早朝のジョギングをしていた晃を突然の激痛が襲った。
走ってなんていられない。
立つ事すら出来ない……。
たまたま、通りがかったおばちゃんが119に連絡してくれたけど……。
即入院―――。
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