狂気までの道

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それから時間が流れるのはあっという間だった。 やはりと言うべきか影人は死刑が決まった。 裁判所で宣告されても影人の穏やかな笑みが消えることはなかった。 本当に思い残すことはないのだろう 死刑の瞬間には立ち会えないが きっと最後の瞬間まで彼は微笑んでいるのだろう 最後まで誰も消すことのできなかったその笑みを それから俺は母の戸籍に入り、街を出ていった。 影人の死刑を宣告されてすぐに父は自殺、母はノイローゼが悪化して精神科に入院した。 この街に思い残すことはなくなった。 後はほとぼりが冷めるまで勉強に明け暮れればいい 勉強している時間だけが、何も考えずにすむ時間だから 影人の死刑が行われたのはそれから一年後 意外と早かった。
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