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後日、同職場の先輩に
あの時の話をしたら
先輩は“お前もか”という
感じで話しはじめた。
「その女性はな
赤目の女と言ってな…」
先輩の話によると
俺が見たあの女性には
心から愛した男性がいた。
しかし、その男性は
女性との結婚を前にして
バイク事故で死に
女性は悲しみにくれた。
そして毎日のように涙を
流し続けたため涙は枯れ
何も出なくなった。
けれど、それでも女性は
毎日、毎日泣き続けた。
ついには、何も流れる
ことのなかった目から
涙ではなく真っ赤な血が
流れるようになった。
そうして女性は
出血多量で亡くなった。
そのとき、女性の目は
真っ赤に染まっていた。
流し続けた自らの血で。
「…だから、それは
部屋じゃないんだ」
そう、俺が見たあれは
赤い部屋ではなく
こちらを見返す女性の
赤い目だったのだ。
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