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ある日の夜中。
ボクは家から抜け出し、しんしんと雪の降り注ぐ街を歩いていた。
其の脚は高そうな建物へと向けられて…。
ボクは其の日、飛び降りる気でいたのだった。
やっと見付けた、古びた建物。
虚ろな瞳は其処に向けられて。
少し身体が震えた。
寒さからか、死の恐怖からか分からぬが
小刻みに揺れる身体を自分自身で抱き締めボクは脚を進めた。
其の刹那。
『すみません。ちょっと良いですか?』
静かな暗闇の中、背後から聞こえてきた声に肩を揺らした。
今は夜中で、更に此処はあまり人気が無い。
だから人なんて珍しくて…。
其の時はただ純粋に怖さを感じた。
ゆっくりと振り向いたボクの視界には、仮面をした男―――蜜快高校の校長がいたのだった。
自身の高校の説明をしてボクに名刺を渡し、暗闇に消えていった相手。
初めはそんな馬鹿な話信じられなかった。
でも、もし本当の話だとしたら…。
ボクは高校に行けるし、これ以上姉に迷惑を掛けずに済む、と思った。
しかも、学校からは月毎にお金も振り込まれると云う事は、
姉に些細ながらも親孝行ならぬ"姉孝行"出来るのだ。
姉が……幸せになれるのだ。
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