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裏口から出たウィリアムは厩に向かうと繋がれた一頭の馬に駆け寄る。
そして馬に跨がり、厩から出ると真っへ直ぐ西へ馬を走らせた。
もうカルロスと会うことはないだろう。 カルロスがすぐに追い付く、と言っていたが、あれは嘘に違いない。
何より、ウィリアムに短刀を渡したことが証明していた。
だがとにかく今は逃げるしかない。
国境を越えるまでは、安心はできないのだ。
ウィリアムは日が傾き始め、薄暗くなる林道をただひたすら馬を走らせた。
一体どれだけ走ったのだろうか?
城のある王都セントラルガーデンを出てから少なくとも半日は経ったと思われる。
昨日城を出た頃と同じく、日が傾き始めている。
「そろそろ休まないと… 体がもたない」
そう判断したウィリアムは道の隣に流れていた川の側で馬から降りる。
そして川の前に屈み込み、手で水をすくいゆっくりと飲む。
昨日の昼から何も口にしていなかったウィリアムの体は想像以上に乾いていたのか、彼は何度も水をすくい、飲む動作を繰り返した。
体が潤ったところで、ウィリアムはその場に倒れ込む。
ずっと馬に乗っていたため、尻や腰が悲鳴を上げていたのだ。
「もうすぐ日が沈む… 今宵はここで眠るとしよう…」
ウィリアムは徐々に沈んで行く太陽を見ながら呟いた。
とは言え、生まれてこの方野宿などしたことがないウィリアムは当然火の起こしたことすらなかった。
知識としてはあるのだが、火打ち石など持っているわけもない。
ウィリアムは何もできないまま、夜を迎えるのだった。
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