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一瞬だけ目を閉じたつもりが、寝てしまっていたみたいで、ウィリアムが次に目を開けた時には既に太陽が真上になりかけていた。
そのことに驚いた彼は慌てて体を起こした。
辺りはウィリアムが眠りについた時と何も変わらなかった。ある一つのことを除いては。
「馬がいない…」
繋いでいなかったので、どこかに行くのは当然だろう。
または誰かに盗まれたのかもしれない。
ウィリアムは自分の迂闊さを呪いながらも、体を起こして川で顔を洗う。
それから身辺を確認すると、幸い何も取られていなく、剣もカルロスから貰った短刀もあった。
安心したところで、ウィリアムはあることに気がついた。
「とりあえず、腹が減ったな…」
起きてからと言うもの、腹の虫が鳴き続けている。
ウィリアムは元来食事に困るということはなかった為、これほどまでに腹が減るのは始めてだった。
そしてウィリアムは考える。
生まれて始めての狩りと言うものをしてみるか、それともどこか村などを探してそこで食事をするか。
狩りは、これまた知識はあるがやったことは無く、仮にやったとしても成功する確率は低い。
逆に村へ行けば、兵達に見つかる危険はあるがちゃんとした食事にあり付ける。
ウィリアムは考えた末に、道に沿って村へ行くことに決めた。
実際のところ、村があるという確証は無いものの、彼は西に向けて歩き始める。
そして川から1時間程歩いたところで道にようやく人の姿がちらほら増え始めた。
人が通るということは、近くに村か町があると言うことで、ウィリアムの足取りも自然に軽くなって行く。
だが、道行く人々はそんなウィリアムを怪訝な目付きで見ていた。
それもそのはずである。
なぜなら彼の服装は明らかに貴族、また王族が着るような服だったからである。
そして、そんな服を着ている貴族と思われる男が供も連れずに一人で田舎道を歩いているとくれば、怪しまずにはいられないだろう。
何よりの決め手は彼の髪の色だった。
白銀の綺麗なその髪は、世の中そう何人もいるわけも無く、彼は無意識に人々の注目を集めていた。
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