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これだけ人目に付けば、やがてはヨロキの手の者達に伝わるかもしれない。
村や町に行けば尚更だ。
この服装をまずどうにかしよう。
ウィリアムはそう考えて、たまたま通り掛かった行商人に話しかけた。
「行商人の方とお見受けするが、少しよろしいか?」
話しかけられた行商人は面倒臭そうに顔を上げ、ウィリアムを下から上へと舐めるよう見た。
「お前さん、見たところ貴族みたいな格好をしているね。…で、何の用だい?」
「何か服があれば売って欲しい」
ウィリアムがそう言うと、行商人は首を傾げた。
「おかしなことを言う。お前さん、いい服を着ているじゃないか。別に服なんていらないんじゃないのかい?」
ウィリアムは痛いところを突かれて、たじろぐ。
「こ、この服は動きづらくてな… 良ければ、この服と交換してくれないか?」
行商人はじっとウィリアムの顔を見つめると、首を傾げて唸り始めた。
「お前さん、どこかで見た顔だな…… まぁ良い。こっちに来な」
考えるのを止めた行商人はウィリアムを手招きすると、近くの路傍に鞄を置き服を出し始めた。
「これなんてどうだい?」
行商人は一着の黒いジャケットとセットのズボンをウィリアムに見せた。
「うむ… 悪くはないが、黒一色はな…」
ウィリアムは他のを見せてくれと行商人に言うと、行商人は次に白の袖口の広いシャツと茶色いベスト、深緑のズボン、そして茶色いブーツを取り出した。
「すまんね。今はこれしか無いんだ」
ウィリアムは両方を見比べると、少し考えた上で行商人に言った。
「こちらの服をくれ」
彼は黒一色の服を選ばず、後から見せて貰った服を選んだ。
そしてウィリアムは着ていた服を脱ぐと、それを行商人に渡し、そして新たな服に着替える。
ウィリアムが最後に剣のホルダーを腰に付け、剣を下げようとしていた時に行商人が剣に指を差した。
「良い剣を下げているね。どうだい? 高く買うよ?」
「いや、これは大事な物だ。売る訳にはいかない」
ウィリアムは剣を大事そうに撫でながら断ると行商人はそうかい、と呟いた。
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