序章

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「ウィリアム アメストリアって言えば、この国の皇太子じゃない。 反逆者って何なのよ?」 女性主人は扉の前に偉そうに佇む、彼らを見ながら呟いた。 「この辺りで、目撃したとの情報が寄せられている。王国の為に協力してもらおう」 地主がそう言うと、兵達が店の客達の顔を調べて行く。 「あん? 何だテメェら!」 一人の酔っ払いが調査をする兵士に突っ掛かる。 「調査を邪魔する者は、陛下に対する反逆罪として処罰することが認められている。 痛い目に遭いたくなければ、大人しくしていろ」 兵士は剣を抜き、突っ掛かる男に向けた。 男も流石にマズイと思ったのか、渋々席に座る。 ざわつく店内の中で兵達は黙々と調査を進める。 そして店にいた客のほとんどを調べ終えると、カウンターの隅いるウィリアムの存在に一人の兵士が気づいた。 「おい、貴様。怪しい奴だな? ローブを脱いで、顔を見せろ」 「……………」 ウィリアムは兵士に背を向けたまま、無言を貫き通している。 マズイ… このままではバレてしまう… フードの下の彼の表情は焦りと緊張で歪んでいた。 ここで逃げても捕まるだろうし、ましてや闘うわけにもいかない。 これぞ絶体絶命。 そんな時に、女性主人が兵達に話しかけた。 「その人、顔に酷い火傷をしていてさ。人前に顔を出せないんだよ。 たぶん見たらあんた達、今日の晩ご飯食べれないわね。 それよりお探しの皇太子なら、この店の裏にある林道を登って行ったわよ。 今なら追いつけるかもよ」 どこから考えついたのか、彼女はペラペラと真っ赤な嘘を言ってのけた。 「その話、本当か!? おい行くぞ!」 隊長格らしき男はそう言うと、部下達を連れて大急ぎで店から出て行った。 女性主人はその様子をニコニコしながら見送る。 「はぁ~ 緊張した… あいつら想像以上に馬鹿で助かったわ」 彼女は力無く、その場に座り込む。
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