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ウィリアムは部屋に一人になると、キョロキョロと辺りを伺い、そしてローブを脱ぐ。
そして腰のホルダーから剣を抜き、壁に立てかけ、小さなベッドに腰掛けた。
「固いな…」
ウィリアムはそう言うと自分の体をベッドに預け、ため息をついた。
下の階からは人々の楽しげな声が聞こえる。
ウィリアムはゆっくり目を閉じて、全身の力を抜いた。
彼はこれまで、一人で何でも出来ると考えていた。
だが、それは城の中での生活の事であって、もちろん従者達の支えがあって言えることだった。
しかしいざ城の外に出てみると、今まで培った力が何にも役に立たない事が分かった。
生まれて初めて屋根の無いところで寝て、生まれて初めて長距離を馬車無しで歩き、生まれて初めて他人の家に泊めてもらった。
自分がどれだけちっぽけな存在か、痛感させられた瞬間だった。
そしてこれからもそうだろう。
自分には味方など、もはやいないのだから。
アンナはようやく最後の客を帰したところで、慌てて二階へと続く階段を登っていた。
「随分遅くなったな。彼、もう寝てるかしら」
アンナはそう呟くと、ウィリアムがいる部屋の前に立ち、扉を叩く。
しかし返事は返ってこず、どうしようかと迷ったが、アンナは恐る恐る扉を開けて部屋に入った。
「お~い、起きてる~?」
とアンナは声をかけたが、ベッドの上の人物は返事をしない。
「寝ちゃってる…」
アンナはゆっくりベッドに近づくと、彼の寝顔を拝んでやろうと、覗き込んだ。
「あら…! これはこれは…」
彼女はベッドの上で寝ているウィリアムの顔を見て驚いた。
さっきはローブで顔を隠していたので、よく分からなかったが、今では彼のその端正な顔があらわになっていた。
そして何よりも、アンナは彼の銀髪に驚いたのだった。
「もしかして… っていうか、絶対そうよね…」
アンナは何かを確信したかのように頷くと、再び彼の顔を見つめた。
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