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アンナがずっとウィリアムの顔を見つめていると、ウィリアムが偶然目を覚ました。
「……な、何をしている?」
ウィリアムは自分の顔にじっと見つめているアンナに向かって言った。
「あ、起きた? お腹空いたでしょ? 夕食、用意してるわよ」
寝起きで頭が定まらないウィリアムは、そのまま彼女の言葉を聞いていたが、ある事を思い出して、慌てて頭に手をやった。
そうだ… ローブを脱いでいるんだった…
ウィリアムはしまった、と言わんばかりに焦っている。
そんな彼にアンナは優しく語りかけた。
「大丈夫よ。そんなに慌てなくても。
誰にも言ったりしないから」
「……………」
アンナはそう言うが、ウィリアムは警戒しながら彼女を見据える。
「とりあえず夕食にしましょ。お腹が減っちゃ、頭が回らないしね」
そんなアンナの様子に、警戒を解いたウィリアムは彼女が歩いて行く後を、付いて行った。
「しっかし驚いたわ! まさかあんたが皇太子様だなんてね!」
ウィリアムとアンナはテーブルを挟んで座っていた。
卓上にはアンナの作った料理が並べられている。
アンナは笑いながら、そう言うとパンをちぎって口に入れた。
「…………」
そんなアンナに対して、ウィリアムは俯きながら黙っていた。
まるで怒られる前の子供の様に。
「ほら、早く食べないと冷めるわよ。せっかく作ったんだから、美味しそうに食べてよね」
アンナがそうやって促すと、ウィリアムは頷いてスープを口に運びだした。
「どう美味しいでしょ? 代々うちに伝わる味付けなの」
「あぁ。とても美味しいよ」
久々に口を開いたウィリアムにアンナは微笑みを浮かべる。
「…聞かないのか? 私のことを…」
料理を口に運ぶアンナに、ウィリアムが尋ねる。
アンナはそれを口に入れ、飲み込むとフォークを置いて、ウィリアムを見た。
「聞いても教えてくれないでしょ? だったら、あんたが話したくなるまで待つだけ。そうしたほうがいいと思うから。 あんたにとっても、あたしにとっても」
真剣な顔つきのアンナに、ウィリアムは思わず目を逸らしたが、再びアンナの顔を見る。
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