序章

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何故こんなことになったのだろうか。 私はいつものように鍛練をし、勉学に励み、この王国の王に見合うよう努力してきたはずだ。 父上の教えも全て守っていたし、家臣達に対しても皆平等に扱っていたし、兄弟達との仲も全て上手くいっていた。 恨まれるようなことはしていない。 疎まれることはしていない。 なのに、何故だ。 何故、私は今自室に軟禁されている? 理解できない。 閉ざされた暗い部屋で、一人の男が椅子に腰掛けている。 男の顔は酷く窶れ、綺麗な白銀の髪も乱れていた。 顎には無精髭が生えており、男が何日こうしているか、それで伺えた。 「私は一体どうなったんだ…」 男の口が開き、ポツリと呟く。 これで何度目かの自問自答だったが、当然答えが返ってくるはずもない。 この男は本当に自分がこうなったか分からないのだ。 いや、分からないふりをしているだけなのかもしれない。 自分が後継者争いのせいで、謀叛と疑いをかけられ、こうしていることを。 信じたくないのかもしれない。 その時、部屋の扉が叩かれた。 そして次にゆっくりと扉が開けられる。 「皇太子殿下、王が王座の間で…」 扉を開けた重臣が話すのを止めた。 何故なら、いるはずの人物がそこにいないのである。 「い、いない!? どこに行った!」 重臣は部屋に入ると、布団を捲り、クローゼットを開けて、男を探す。 そして開け放たれた窓に向かった。 まさかとは思うが、衛兵が守る扉以外出口はここしかない。 部屋にいないとなると、可能性は高い。 「急ぎヨロキ様に伝えろ! 皇太子が逃げたとな!」 重臣は衛兵に命令すると、部屋を再度確認した後、去って行った。
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