第壱章 ~傭兵~

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ウィリアムはアメストリアを無事出ることに成功し、ランス東部の都市ルーデンドルフに来ていた。 「ルーデンドルフか…。懐かしいな」 ウィリアムはルーデンドルフの町並みをしみじみと観察していた。 幼い頃、外交の一環として父と訪れた事があるのだ。 さすがに何年も前の事なので、街の様子は様変わりしていた。 ここルーデンドルフはランス第二の都市で、ランス東部地区の物流が集まる交易が盛んな都市だ。 アメストリアはもちろんの事、周辺諸国が戦争に精を出している中で、唯一中立の立場のランスは街の活気はおろか、市場の品揃えも大陸随一だ。 ウィリアムは一先ず、腹ごしらえの為に一軒の定食屋へと向かうことにする。 定食屋は洒落た感じの店で、昼間のせいか店内は活気で溢れていた。 ウィリアムは空いている席を見つけると、そこに腰を降ろした。 そして間髪入れずに、ウェートレスがやって来る。 「何になさいます?」 トレーを膝の前に持って、彼女はそう尋ねると、ウィリアムはメニューを見ながら言う。 「Aセットを頼む」 「かしこまりました」 ウェートレスはお辞儀をすると、踵を返して厨房に向かう。 ウィリアムはローブのフードを脱ぐと、思い切り背伸びをした。 暖かい気候が、疲れたウィリアムを眠りへ誘う。 そうして、うつらうつらしているとウェートレスが料理を持って戻ってきた。 料理が届いたところで、眠気を振り払うとウィリアムは食事を始める。 「最近どうよ?」 「う~ん、全然だな」 ウィリアムの背後から、そんな会話が聞こえてくる。 「この前なんか、貴族の隊長さんに最前線に放り出されてよ。報酬なんか貰わずに、その場から逃げてきたぜ」 「そうか… 傭兵稼業も楽じゃないんだな」 この言葉に反応したのか、ウィリアムは振り返ると男達に話しかけていた。
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