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ルーデンドルフへ来る数日前。
森で野宿をしていたウィリアムに、一人の少年が話しかけていた。
「お兄さん、ここで何をしているんですか?」
少年はウィリアムを見ながら尋ねた。
「何って野宿だが」
ウィリアムはさも当然のように、少年に返事をする。
だがその少年はウィリアムの言葉に目をパチクリさせながら驚いていた。
「お兄さん馬鹿ですか? 死にたいんですか? こんなところで野宿なんてしたらダメですよ」
「お、おい。話が見えないぞ。分かりやすく説明してくれ。―なんで野宿をしたらダメで、死ぬことになるんだ? それと馬鹿と言うな」
ウィリアムは少年がとんでもないことを言い出したので、若干焦りながら少年に尋ねる。
「知らないんですか? この辺り、何かと安全に見えて、そうじゃないんですよ」
「つまり危ないと言いたいのか?」
はっきりしない少年の物言いに痺れを切らしたウィリアムが裏付けすると、少年はコクリと頷いた。
「はい。夜になれば狼や盗賊、果ては化け物が現れると言う噂があります。だから危険です」
狼や盗賊は分かるが、化け物はさすがに無いだろう。
ウィリアムはそう考えながらも、少年に言う。
「忠告をありがとう、少年。で、そこまで私に言っておいて、私にどうしろと?」
ウィリアムは少年が野宿は止めて、さっさとどこか安全な場所に移動しろとでも言うのだろうと思っていたが、少年の口からは予想外の言葉が出た。
「野宿なんて止めて、私の家にいらして下さい。―あと私は男の子ではありません」
「予想外だな…」
ウィリアムはまさかの招待と、目の前で少年と思っていた子供が帽子を取り、長い髪を見せて女の子だと分かったこと両方に対して言った。
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