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「何見てるんです?」
ウィリアムの視線に気づいたイーチェが尋ねた。
ウィリアムはそれに動じること無く、イーチェを見つめ続ける。
「少し聞いてもいいか?」
「何ですか? また恥ずかしい質問ですか?」
「いや、そんなことは聞かない」
ウィリアムはきっぱりと、それに対して否定した。
イーチェは何か分からずに、首を傾げながらウィリアムを見る。
「イーチェ、どうして君は見ず知らずの私なんかを家に泊めてくれたんだ?」
ウィリアムはさっきから、それが気になっていたのだ。
普通ならば、こんな怪しい男を家に呼んだりはしないだろう。
「…ウィルさん、どこか優しい雰囲気が漂ってたんです」
「それだけでか? 泊めてもらって、こんなこと言うのは不謹慎だと思うが、もう少し考えたほうがいいぞ」
ウィリアムが少し厳しく指摘すると、イーチェは下を向き、唇を噛み締める。
「私は別に君に説教をしようと言っている訳じゃない。 ただ、君みたいな女の子が簡単に男を家に入れるものじゃないって言いたいんだ。
もしも身に何かあったら、どうするつもりだ? こんな山奥じゃ誰も助けに来ないぞ?」
ウィリアムはそう言うが、まだ幼いイーチェにとって、それは説教同然で尚且つ良かれと思ってしたことを否定されては落ち込まないはずが無い。
「……………」
イーチェは下を向いたまま顔を上げない。それどころか、彼女の顔からは光る物が落ちた。
やってしまった…
ウィリアムはイーチェの様子を見て、後悔した。
彼の悪い癖だ。 相手に何か間違っているところがあれば、すぐに否定し自分の意見を押し付ける。
こう言う癖は争いの元になる。
早く直さなければ。
「…すまない。言いすぎた―」
「私、嬉しかったんです…」
ウィリアムが謝ろうとした時に、イーチェが口を開いた。
ウィリアムはそのままイーチェの言葉に耳を傾ける。
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