序章

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数秒後、部屋が静かになり誰もいなくなった。 窓から皇太子と呼ばれた男が部屋に入ってくる。 「本能的に隠れてしまったが、正解だったようだな…」 皇太子は服に付いた埃と汚れを払うと、壁に架けていた剣を手に取り、腰に差した。 「やはりヨロキの仕業だったか…」 皇太子は苦虫を噛み潰したような顔をする。 ヨロキとは現国王、つまり皇太子の父が皇太子の時代から共に連れそった宰相で、皇太子の実弟に当たるエドワードの保護役でもある。 そのヨロキとしては、自分の育ててきたエドワードを次期国王に仕立て上げたいと言う気持ちと、エドワードを国王にしてしまえば、アメストリア王国は自らの思いのままになると言う欲望から、邪魔な皇太子を謀叛の罪を着せ、潰してしまおうと考えたのだろう。 信じたくはなかったが、状況的に言えばヨロキが全ての原因なのだ。 ここは何としても自らの潔白を王に認めさせ、奸臣ヨロキを成敗してやる。 皇太子は部屋から出て走り出した。 行き先は父のいる王座の間である。 「ヨロキ様っ! 大変でございます!」 重臣が慌ててヨロキの部屋に飛び込む。 「何じゃ、いきなり! 無礼者が!」 「も、申し訳ありませぬ! 先程、皇太子の部屋に向かったところ、部屋は蛻の殻で…」 重臣は頭を下げ、皇太子が逃げたことをヨロキに報告する。 ヨロキはそれを聞くと、近くにあった本を重臣へと投げ付けた。 「たわけがっ!何やっておるのだ!! 本来ならば今日、陛下に皇太子処刑の命を頂くはずなのに、計画を潰す気か!」 「まことに申し訳ありませぬ!」 「ええい! 謝っておらぬで早く探し出してこんか! 見つけ次第殺してしまえ!」 「はい!」 ヨロキはそう怒鳴りたてると、グラスにワインを注ぎ、それを一気に飲み干した。
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